教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
応接間で母は翔君にお茶を淹れてから「後は若い2人でごゆっくり」と言って部屋を出ていった。


「お見合いか」と言いたくなったが、つっこむことすら面倒くさいのでやめておいた。


翔君はふっと笑ってからお茶を一口飲む。


何気ないしぐさなのに絵になっているなぁ。


「僕の顔が何か?」


あまりにも凝視していたらしく、翔君が訝しげに眉をひそめて聞いてきた。


「いや、なんでも」


すると彼は改まったように咳払いをひとつしてから言った。


「さて、本題だが」


「?」


「君の担任は誰だい?」


「石野先生だけど」


どうしてそんなことを聞くんだろう。


「そうか。僕も高校の3年間はそうだった。ということは…」


「?」


「水香ちゃん。そろそろ彼に進路を決めるように言われているんじゃないか?」


「!」


どうしてそんなことを翔君が知っているの?


「ふふふ、驚いているようだね」


いやいや。


そりゃ、今のは誰でも驚くと思いますけど。


「まぁ、無理もないな」


「はぁ…」


「僕も高校時代、なかなか進路が決められなくてね。ちょうど今頃に決めろってうるさく言われたんだ」


「そうなんだ」


「それで急にそれを思い出して君を訪ねたわけさ」


「でも…」


あたしには1つ疑問があった。


「どうしてあたしが進路を決めかねているって知っているの?」
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