教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
「…じゃ、そろそろ帰るとしますか」


張替がそう言った時、俺の腕時計はすでに午後5時を少し過ぎたところを教えていた。


耳もいつのまにか平気になっている。


「そうだね」


「おう」


水上と俺は頷いた。


「じゃ、水上さん、森田。またな」


「うん。じゃあね。張替君、森田君」


「ああ。張替、水上、達者でな」


自分のセリフに2人が笑ったのを確認してから、俺は羽田空港を後にした。


今思えば、この時、張替か水上のどちらか、あるいは両方とでも一緒に帰っていれば、あんな過去に縛られることはなかったんだと思う。


だって1人だったから冷静さを失い、あんな行動を取ってしまったのだから。


…話を戻そう。


俺は迎えの車に乗り、東京に帰った。


しかし、家に向かう途中で買いたい物があったので、通りかかったスーパーで車を停めてもらう。


外はすでに深い暗闇に包まれていた。


そして無事に買い物を数分で済ませて、外に出た時のことだった。


ふと見ると、スーパーの陰に誰かがいた。


このスーパーの裏は、表の賑やかな通りが嘘のように人気がない場所だ。


気になった俺はこっそり見てみることにした。


あの時、思いとどまっておけばよかったものを…。
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