教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
少し走ると、誰かにぶつかった。


無論、慌てて謝る。


「あっ、すみません」


「いいえ」


ぶつかったのは俺と同い年くらいの青年だった。


青年はあの現場の方に消えていった。


それからのことは覚えていない。


頭の中が混乱して思考力を失い、車の運転手が何を言っても上の空だった気がする。


そして俺は後ほど、知ってしまう。


あの女性は男達に命を奪われてしまったこと。


青年は彼女の恋人だということを。


あの時、助けるか警察に通報するか、何らかのアクションを取っていれば…。


そう思わずにいられなかった。


悔んでもあの女性は帰って来ないのはわかっている。


しかし、もし俺が動いていれば結末は違ったであろうに。


「俺がどんなに願っても


お前はもうここにはいない


なぜだAh俺は何をしていても


どこにいようとも


お前しか頭にいない


なのにどうしていないんだ


見捨てた奴が悪い


見捨てた奴が悪い


そうさ見捨てた奴が悪い


そいつはどこだ、闇の中


そんなの納得いかねぇそう言ったってそれが人生さ


でもこの気持ちはそれでは通用しない…」


ラップを歌っていた男、それはあの時の青年だった。


これを聞いた時、彼は俺が女性を見捨てたのを知ったのだ、と悟った。


これが真相である。
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