教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
このまま。


このまま2人でずっといれたらいいのに。


そんな欲望が心の奥から顔を出す。


「先生」


「なんだ?」


「このまま時間が止まればいいのに…」


先生はしばらく黙っていたが、あたしの手を引いて歩き出した。


「早く教室行くぞ」


そう言う先生の顔は真っ赤だ。


しかもかなり早口。


うわぁ、なんだかかわいい。


「…照れちゃって」


ぼそっと言っただけなのに先生がすごい勢いで、こちらを向いた。


その顔もやはり真っ赤だった。


耳まで赤くなっている。


「お前さ」


「?」


「大人の男をバカにするなよ」


「わぁ、自分で大人の男とか言っちゃってるよ」


「おい、お前教師をからかうな」


「からかってませんよ」


「それ絶対嘘だろ」


「いいえ。それより先生、いくらなんでも赤くなりすぎですよ。酔ってるんですか?…あたしの言葉に」


「バカ野郎」


「あはは。やっぱり照れてるんじゃないですか」


「うるせえ。とにかく行くぞ」


「嫌です。行きません」


あたしは絶対に動くまいと踏ん張る。


ついでに上目遣い攻撃。


「やれやれ。お前みたいな悪い生徒は…こうだ」


そう言って先生はいきなりあたしをお姫様抱っこした。
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