教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
森田先生…か。


こうしてあたしは彼に一目惚れした。


村井先生が好きだった頃と同じだ。


恋をしている時特有の、あのドキドキという心臓の脈打ち方が今、左胸の奥で始まっている。


もはや誰の声も耳に入らない。


ただあの先生が欲しいという願望だけが、心の奥にふつふつと湧き上がってきた。


「…水香?水香!」


突然友達の野村陸の声がする。


それであたしは我にかえった。


「何?」


「何じゃないわよ」


川相凛も言う。


彼女もあたしの友達だ。


「森田先生って超カッコよくなーい?」


凛がニヤニヤしながら言う。


「私のタイプだよ~!」


陸も興奮している。


キャーキャー盛り上がっている…というか騒いでいる2人を、あたしは黙って見ていた。


そうだよね。


森田先生をカッコいいと思うのは、あたしだけじゃないんだよね。


こんなに素敵なんだから。


他の女の子達も大興奮だ。


それを見ても、あたしの心は強く強く森田先生をつかんで離さない。


こうなったら、どうにかして先生にあたしを見てもらわなきゃ。


…といっても肝心の方法が思いつかない。


しばらく考えたけど無駄だった。


「…!」


いや、無駄じゃなかった。


我ながらいいこと思いついたかも。
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