教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
「先生、どこ行くんですか!?」


「お前が下りたくねぇって言ったんだろ」


「そうですけど」


「じゃ、下りるか?」


「…下りません」


「お前の言うこと、聞いてやるよ。時間は止められないけど今日一緒にいることくらいなら…」


「ありがとうございます」


先生は少しだけ微笑んでまた走った。


下駄箱の所で下ろしてもらう。


「まずは休むって電話しなきゃな」


先生はケータイを取り出し、石野先生に電話をしている。


あたしも凛に「今日は休む」とメールを送っておいた。


2人とも電話やらメールやらが終わるとあたしは聞いた。


「先生、どこに連れていってくれるんですか?」


「どこがいい?」


「どこでもいいですけど」


「そんな困ること言ったら1人で行かせるぞ」


「あっ、それは嫌です」


「じゃ、決めろ」


「うーん…やっぱり思いつきません。もうどこでもいいです。先生と一緒なら」


「お前…なかなかかわいいこと言ってくれるじゃねぇか」


そのセリフであたしの顔は紅潮した。


「わかりやすい奴」


くすくすと笑って先生は職員用の下駄箱に向かう。


そんな彼がたまらなくいとおしい。


ふいに先生の左手の薬指の指輪が目につく。


-神様。


先生とあたしは不純な関係…いけない関係なのはわかっています。


でも、どうか許して下さい。


先生はあたしの…。


あたしの大切な人なんです。
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