教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
あたしは家に帰ってから自分の部屋でわあわあ泣いていた。


「先生…」


どうやって家に帰ったかまったく覚えていない。


先生の目から、声から言葉から伝わってきた。


怒り。


翔君との関係を否定しないあたしへの。


あたしはあまりの辛さに空腹も忘れて朝まで眠った。


-翌朝-


土曜日だけど、なんたって桜華風女子高は何気に進学校。


週休2日を先生達が許してくれるわけもなくて、あたしは沈んだ気持ちで数学の課外授業を受けた。


無理矢理出たせいか、授業の内容なんて頭に入るはずもなかった。


帰りの路線バスの中でも先生のことしか頭になくて、いるはずのない先生の姿を無意識に探してた。


いつも通りに終点の駅でバスを降りる。


もちろん先生の姿はそこにない。


…いや、あった。


駅前のブティックの前を女の人と歩いている。


そうか。


あの女の人が奥さんなんだ。


奥さんのデニムのジャケットも、その下に着ている水色の服も、白いひらひらのミニスカートも、ブーツも、みんなあたしが知ってるブランド品だ。


彼女の左手の薬指には先生とお揃いの指輪。


なによりライトブラウンの髪をゆる巻きにし、そして端正な顔立ちにほっそりしたスタイル。


まるでモデルさんだ。


あたしなんかよりよっぽど先生と釣り合っている。


負けたんだ。


あたしは。
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