教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
「じゃあ…さよなら。先生」


「おう。道中、気をつけろよ。じゃあな」


あの後、あたしは早退することにした。


こんな気持ちで授業なんて出来ない。


さっきまでの先生を思い出すたびに、心臓が異常なペースで働くんだから。


あたしは階段の所まで来てしゃがんだ。


涙が落ちる。


やっと、手に入れた。


あたしはようやく先生を手に入れたんだ。


「あれ?青葉」


「わっ、先生」


いきなり石野先生が現れる。


「倒れたって聞いたけど大丈夫?」


「いえ…」


とっさに嘘をついてしまった。


「もしかして早退?」


「ええ。石野先生に伝えるように森田先生に頼んだんですが」


「そうだったんだ。まぁ、明日も学校だし、今日はゆっくり休んだ方がいいよ。じゃ、気をつけて」


「はい。さよなら」


石野先生、嘘ついてすみません。


だけどあなたには、いや、誰にも言えない。


森田先生とあたしは愛し合い、さっき一線を越えてしまっただなんて。


でもタブーを冒してまで愛を貫いた。


もう罰が当たったってかまわない。


怖くもない。


なんて言えたら最高なのだけど。


思わず苦笑する。


でも…。


あたしはこれからの日々を考えると、浮き立つ気持ちが抑まらなかった。


そして妖しく笑い、学校を後にした。
< 38 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop