教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
先生の車の中は居心地がいい。
高級車なのだろうか。
「先生」
「なんだい?」
「先生の家って遠いんですか?」
「まぁな。車で20分だしな」
「へぇ」
「お前の家は?」
「行く時はチャリで15分、バスで40分、歩いて10分。帰りはその逆です」
「およそ1時間か。そりゃ大変だな」
「慣れればこれが当たり前になってくるんですよ」
「へぇ。そうだ。クラシックでも聴くか?」
「何の曲ですか?」
「シューベルトの『アヴェ・マリア』と、ショパンの『夜想曲第2番』が個人的に好きなんだけど」
「いいですね」
スピーカーがアヴェ・マリアを奏でる。
するとどういうわけか、あたしの頭の中で結婚式の妄想がスタートしてしまった。
少し遠くに黒のタキシードを着た先生がいる。
あたしは父さんと一緒にバージンロードを歩いている。
もちろん着ているのはウェディングドレス。
そして先生とあたしが並ぶ。
で、神父さんが「新郎、森田湊典。あなたは生涯、森田水香を愛することを誓いますか?」って言って。
先生はあの澄んだ声で「誓います」って言う…。
「キャー!」
「どうした!?」
いきなり甲高い声を上げたので先生がかなり驚いた顔をした。
しかし、さすがに真実は言えるはずがなく、黙っていた。
そりゃ、車を運転している最中に助手席の人間がいきなり「キャー!」なんて叫んだら誰だって驚くだろうけど。
その後、先生にしつこく理由を聞かれたが、隠し通しておいた。
高級車なのだろうか。
「先生」
「なんだい?」
「先生の家って遠いんですか?」
「まぁな。車で20分だしな」
「へぇ」
「お前の家は?」
「行く時はチャリで15分、バスで40分、歩いて10分。帰りはその逆です」
「およそ1時間か。そりゃ大変だな」
「慣れればこれが当たり前になってくるんですよ」
「へぇ。そうだ。クラシックでも聴くか?」
「何の曲ですか?」
「シューベルトの『アヴェ・マリア』と、ショパンの『夜想曲第2番』が個人的に好きなんだけど」
「いいですね」
スピーカーがアヴェ・マリアを奏でる。
するとどういうわけか、あたしの頭の中で結婚式の妄想がスタートしてしまった。
少し遠くに黒のタキシードを着た先生がいる。
あたしは父さんと一緒にバージンロードを歩いている。
もちろん着ているのはウェディングドレス。
そして先生とあたしが並ぶ。
で、神父さんが「新郎、森田湊典。あなたは生涯、森田水香を愛することを誓いますか?」って言って。
先生はあの澄んだ声で「誓います」って言う…。
「キャー!」
「どうした!?」
いきなり甲高い声を上げたので先生がかなり驚いた顔をした。
しかし、さすがに真実は言えるはずがなく、黙っていた。
そりゃ、車を運転している最中に助手席の人間がいきなり「キャー!」なんて叫んだら誰だって驚くだろうけど。
その後、先生にしつこく理由を聞かれたが、隠し通しておいた。