教壇と愛の狭間で～誰も知らない物語～

先生が､いかにも高価であることを誇張しているような分厚いドアを開ける｡


その瞬間まであたしはてっきり､たくさんのメイドさんが待ち構えていて一斉に「お帰りなさいませぇ!湊典様」とでも言うのかと思っていた｡


しかし､ドアの向こうには60歳くらいのおばあさんが1人いただけだった｡


彼女が言った｡


「お帰りなさい､湊典ぼっちゃん」


「おう､今帰ったぜ｡レイ」


「ぼっちゃん､そちらのお嬢さんはどなた?」


「俺の生徒｡どうしても俺の家に行きたいって聞かないんだ」


「わかりました｡他の方々には黙っておきましょう」


「ありがとう」


あっ､そういえば石井さんに挨拶しないで入っちゃった｡


ちょっと申し訳なかったなぁ｡


とりあえずあたしはおばあさん､レイさんに会釈して言った｡


「えっと､青葉水香です」


「あたしゃ､萩野レイ｡湊典ぼっちゃんの世話役さ」


レイさんとの軽い自己紹介が終わり､あたしは先生の部屋に連れていかれた｡


先生の部屋はおそらく教室の2､3倍くらい広い｡


カーテンや壁紙､ベッドなどの色は青系で統一されていた｡


天井にはきらびやかなシャンデリアが光っている｡


「…」


あたしはその豪華さに圧倒され､ただただ感心するだけだった｡