教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
「それじゃ、あたしゃここで」


レイさんは会釈して部屋を出ていった。


というわけで、先生と2人きり。


うーん、雰囲気といい、この沈黙といい、なんだか気まずい。


とりあえず何か話題を…。


「あの、先生」


「なんだ?」


「さっき、石井さんが言っていた旦那様と奥様ってご両親ですか?」


「そうだ」


「じゃ、沙奈様って?」


「…妻だ」


「あっ、じゃあ、ご両親もこのお城…じゃなくて家に住んでいるんですか?」


「いや、違う場所だけど」


「えっ?!じ、じゃあこの後、この部屋にレイさんはいつ来るんですか?」


「明日の朝だ」


「明日の朝ぁ!?」


と、いうことはまさか…。


「先生」


「どうした?」


「まさか、まさか」


「まさか何?」


「まさか朝まで2人きりですか?」


「そうなるな」


いつもの顔でさらっと答える先生。


朝まで2人きり。


先生と?


「あ、あ、あり得ないぃっ」


「おい、ちょっと待て。お前が来たからレイがわざと退室したわけじゃないんだぞ。いつも通りだ」


「でも…」


「もしかして不満?」


「ち、違います」


「安心しろ。昨日みたいなことはしない」


「昨日…」


それを聞いて昨日の保健室での出来事がフラッシュバックした。


自分でも頬が紅潮したのがわかる。


「それとも」


先生はスーツをいつのまにか脱いでいて、妖しい笑みを浮かべながら、綺麗な手でネクタイをスルスルと外しながら言った。


「それを期待して来たのか?」
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