教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
「先生は学校って車で行くんですか?」


「そうだよ」


「じゃ、乗せていって下さいよ」


「なんでだよ」


「遠いですし」


「俺、現役の時は毎日ここからチャリで通ったんだぞ」


「でもいいじゃないですか。お願いしますよ」


「誰かに見られたらどうする」


「だから途中で下ろしてくれれば…」


「あー、めんどくさい。わかった。特別だぞ」


「やった!」


そんなわけで車の中。


BGMで結構もめた。


朝っぱらからベートーベンの『月光』を聴くのかとか、サラサーテの『ツィゴイネルワイゼン』はないだろうとか。


でもケンカになるはずもなく、言い合いながらも楽しかった。


学校の裏の人気のない場所で下ろしてもらう。


「ありがとうございました」


「おう」


先生に頭を下げ、意気揚々と教室に向かった。


かなり上機嫌ゆえに、まだ誰も来ていない教室の掃除をする。


そして机をきれいに並べる。


それが終わると昨日やり忘れた宿題をマッハで終わらせた。


すべてが終わり、すがすがしい気分になって最近流行っている歌を鼻歌で歌った。


しかし、ふいにあたしの顔から笑みが消える。


とんでもないことに気づいてしまったのだ。


「今日…中間テスト返される!」
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