教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
-放課後-


あたしは森田先生に説教されていた。


「お前、クラスで最低だったよな?勉強しないからだぞ」


「すみません。っていうかここ、石野先生が怒る所じゃないんですか!?先生は関係ないじゃないですか」


「問答無用」


「先生ってやっぱりSですね」


「おい、今何か言ったか!?」


「い、いえ…」


そうして説教は2時間も続いた。


あまりにも長く話したので、先生の声は枯れかけている。


あたしが思わず笑うと、不機嫌そうな顔をした。


「お前のためだぞ」


「わかってますよ」


「じゃ、笑うな」


「はい」


「わかったら早く帰った方がいいぞ。最近物騒だからな」


「先生が説教なんかしないでくれれば、いつも通りに帰れたのに」


「う、それは」


「だから先生のせいでもありますよ」


「…すまん」


そしてあたしは代償として近所のモスでハンバーガーをおごらせてから帰路につくのであった。


先生がおごってくれたハンバーガーはいつもと変わらないはずなのに、特別な味がしたような気がした。


テイクアウトにして家に帰ってから食べたのだけど、その日はずっとドキドキが止まらなかった。


きっとなんだかんだ言って「最近物騒だから」ってあたしを心配してくれたのが一番の原因だと思う。


先生のさりげない優しさ。


それだけであたしはもう胸がいっぱいだ。
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