教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
気がつくと、あたしは自分の部屋にいた。


夢から覚めたんだ。


まだ外は暗い。


時計を見ると、まだ午前0時を過ぎたくらいだった。


…静かだなぁ。


このままずっと夜が明けない錯覚に陥る。


もしも先生と幸せをひとつひとつ紡いでいける未来があるのなら、美しい朝なんていらない。


暗い暗い夜のままだっていい。


あたしにとっては朝より先生の方が大切だから。


だけどこの手に今、幸せなんてない。


あるのはもはや虚無感のみ。


もう明日にすら希望を見いだせなかった。


今頃先生は夢と同じように奥さんとキスをしているのだろうか。


かつてあたしにしてくれたように。


そしてあのキレイな腕で彼女を抱きしめ、あの優しい手で彼女に触れて。


そして…普段は見せない顔を奥さんに見せているのだろうか。


いつもの先生からは考えられない、あのどこか切なげでそれでいて愛おしいものを見ているかのような顔を。


そう。


保健室の時も、先生の家に泊まった時にもあたしに見せてくれた顔。


それを今、奥さんは見ているの?


すべて推量の世界でしかないのに、あたしはそれだけで嫉妬に狂いそうになる。


この理不尽でおかしな気持ちに…。


終止符を打てる日は来るのかな。
< 64 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop