教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
-掃除終了後-


あたしは会議室の掃除を終え、他のみんなと共に教室に戻ろうとしていた。


「青葉」


誰かがあたしを呼んでいる。


振り向くと、そこには森田先生がいた。


なんだか胸がぎゅっと締め付けられる思いがする。


「ちょっといいか?」


あたしがうなずくと、先生はあたしをに教育実習生の控え室に連れていった。


なんだかこの空間が懐かしい。


それにしても何を言われるんだろう。


嫌な態度取っちゃったから別れようとか言うのかな。


だったら好都合だ。


だけどそれを良く思わないあたしもいて。


心の中は感情のカオスとでも言おうか、とにかくぐちゃぐちゃしていた。


「青葉」


「はい」


「この前のことだけど…あれは無理にあいつにやられたんだ」


なぜだろう。


あまり悲しくない。


きっと、別れ話の方がつらいからだね。


あたしの言葉に先生は安堵の表情を見せた。


「先生」


「ん?」


先生はいつもの優しい表情であたしを見る。


つらい。


どうしてこんな時まで優しい顔をするの?


黙っているあたしに先生はなおも言う。


「どうした?」


先生。


あたし、先生が本当に大好きでした。


さよなら。


「先生…あたしと別れて下さい」
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