教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
「えっ…」


先生は信じられないという顔であたしを見る。


いきなりだもの、当たり前だよね。


「あたしは、先生の隣にはいられません」


「どうしてだよ?」


「…あたしは」


「?」


「あたしはもうそんな資格がないんです」


「どういうことだ?なぁ、何かあったのか?」


確かにあったよ、心の変化が。


でもそんなの言えない。


言える勇気があるならどんなにいいだろう。


だからあたしは冷たく振る舞うだけしか出来ない。


「何もないです」


「何もなかったらこんなこと、言わないだろ?」


先生のまっすぐな視線があたしの体を射抜くかと思うほど、彼は強い目をしている。


心の中まで透視される気がした。


先生はあたしを信じてくれているんだ。


セリフでわかった。


でも、もういい。


「何でもないんですってば!」


声を荒くするあたしを見て先生は唖然とする。


無理して不機嫌な顔を作って先生に見せ、その場を立ち去る。


「ふざけるな!」


先生の声があたしの背中に突き刺さった。


仕方ないじゃない。


先生だってわがままで嫉妬ばかりする女なんかいらないでしょ?


嫌いでしょ?


…どうしてだろうね。


自分を守るために別れ話をしたのに、心はボロボロになっていた。
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