教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
先生の顔は悲しそうな表情を湛えていた。

それを見たあたしは二の句がつげないでいた。


「青葉、別れたい理由ってそれだけか?」


「そうですけど。先生は嫌じゃないんですか?こんなわがままで嫉妬深い女」


「だってお前はお前だろ?お前が青葉水香であることは変わらない」


「先生」


「だから、えっと…あー、上手く言えねぇ。俺、不器用でさ」


彼は照れくさそうに頭をかく。


「何ですか、それ」


思わず笑ってしまう。


「だから、お前は俺の隣にいてくれればいいんだよ。俺のこと以外、もう考えるな」


すごく嬉しかった。


先生の不器用だけどまっすぐな言葉達があたしの心を癒していく。


あんなに気にしていたのに、先生の言葉だけで一気に気持ちが変わった。


だからあたしは今、首を縦に振る。


「はい」


先生、ありがとう。


本当にありがとう。


「あっ!!」


いきなり先生が大きな声を出した。


「どうしたんですか?」


「いや、昨日のドラクエどこまで進んだっけと思って」


「…」


なんだそりゃ。


先生って何気にゲーマー?


かく言うあたしもゲームは嫌いじゃない。


RPGなんて最高だと思う。


素晴らしい音楽、美しいグラフィック、洗練された壮大なストーリー…。


「青葉、顔が笑っているぞ」


「気にしないで下さい」


いつのまにかあたしの顔には笑顔が戻っていた。
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