教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
「村井先生…?」


「1年前、こうしていればよかったのにな」


「先生、何言っているんですか?」


すると村井先生はまたも切なそうに笑って言う。


「このことも、俺のことも…夢だと思って忘れてな」


そう言って彼は別れを告げる。


でも先生、どうしてそんな顔をしているの?


別れた後に残るのは頭に触れられた感触と切ない気持ち。


そして…速くなった鼓動。


「おーい、青葉」


見ると森田先生が手を振っている。


あたしが駆け寄ると先生は言った。


「いやー、ごめん。ついゲーマーの血が騒いじゃってね」


「大丈夫です」


「ん?お前元気ないな。どうしたんだ?」


「何でもないですよ」


そう、何でもないはずなのに…。


この気持ちは何?


忘れていた気持ちが復活したのかな。


でも森田先生への気持ちが弱まったわけでもない。


この揺れる心を誰かなんとかしてほしい。


かなり深刻な顔をしていたのだろう、先生が顔を覗き込んできた。


「なぁ、具合でも悪いのか?」


水のように透き通って美しい瞳。


やっぱり見とれてしまう。


「大丈夫ですから」


あたしは顔をそむける。


すると先生がいきなりこんなことを言い出した。


「青葉。星でも見に行こうか」


「星?」


「そう。星」


「はぁ…」


こうしてあたし達はよくわからないままに星を見に行くことになった。
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