教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
先生に手を引かれて階段を上っていった。


「…!」


そこにあったのは確かに星だった。


「ここってさっきいた場所より街灯がないんだよ。だからこんなに見えるんだ」


もはや先生の声は耳に届いていない。


ただ、あたしの目という名前のスクリーンには素晴らしい星空が映し出されていた。


まるで紺碧のラピスラズリかサファイアの海に、ダイヤモンドのかけらをばらまいたようだ。


まさかこんな場所で、こんな美しい星空が見れるなんて思いもしなかった。


「青葉、夢中だな」


先生はまた優しい笑みであたしを見た。


ヤバい。


星空並にこの人の笑顔が美しい。


「先生、ありがとうございます。こんな綺麗な星が見られるなんて」


先生はまた笑った。


しかし、その笑みは若干黒かった。


「礼ならこっちの方がいいな」


先生の唇が重なってくる。


「青葉、愛してる…」


先生、ずるいよ。


こんな美しい星空の下でそんな甘いセリフ言うなんて反則だよ。


でも嬉しかった。


先生からそう言ってくれるなんて。


「あっ、流れ星だ」


先生がななめ上の空を指さす。


しかし、それはもう見えなかった。


でも…。


あたしは一歩前に出る。


きっと願いは届くから。


「どうか先生とずっと一緒にいられますように!」
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