教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
-翌朝-


木曜日。


あたしは複雑な気持ちだった。


ゆうべ、夢に村井先生が出てきたから。


森田先生と星空を見ていた時は村井先生のこと、忘れていたのに。


どうして昨日の村井先生の切なげな表情が脳裡から離れないの?


そして1年前の彼との思い出が今、頭を駆けめぐっているのはなぜ?


でも恋愛感情ではないのはわかっている。


この気持ちに懐かしさすら覚えているから。


-回想-


確かあたしはこの時、塾で村井先生の個別授業を受けていたんだっけ。


「じゃ、青葉。そろそろ休憩しようか」


「はい」


それであたしは先生に構ってもらいたくて、いつも塾の外に遊びに行っていたんだ。


時間になると、先生がさがしに来てくれる。


あたしだけのために来てくれる。


それがすごく嬉しかった。


その日も時間になって先生が来てくれてこう言う。


「青葉、時間だぞ」


そしてあたしは無邪気な笑顔を見せて言ったんだ。


「はぁい」


そしたら先生はなぜか目がふっと優しくなった。


なぜかわからないけど、でもあたしはそれだけでドキドキしてしまって。


それからますます先生の虜になったんだ。


そしてどんな形でもいいからそばにいたいと願うようになった。


先生に会えるのは金曜日。


いつもいつも金曜日を待ちわびていた。
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