教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
あたしの思考が一瞬停止すり。


「ああ」


しかし、あたしの思いをよそに先生は迷うそぶりもなくうなずいた。


恋人ならそんなこと、まるで空気みたいに当たり前なものなのかもしれない。


この先はもう見たくなかった。


おとなしく教室に戻り、誰もいないのをいいことに静かに涙を流した。


1粒、2粒と思いが届くことなく落ちていく。


そしてしばらくして帰ってきた先生は、何もなかったかのように授業を始めたんだ。


あたしが少しの間、見ていたとも知らないで…。


-回想終-


思い出すと、なんだか不思議な気持ちになっていた。


追憶というか追想というか追懐というか。


とにかく今、そのようなものに頭を占領されている。


でも村井先生を愛しているわけではない。


森田先生が隣にいてくれて、愛してくれてそれが幸せだから。


それに、彼はあまりにつらくて別れようと言ってしまった時も、あたしを責めないで励ましてくれた。


それがどんなに嬉しかったか。


あたしは2人の先生に感謝している。


あの時、村井先生に会ったことで昔の恋を思い出し、今の恋…森田先生が愛してくれる幸せを再認識出来た気がするから。


「きゃーっ!」


ふいに教室の外から甲高い叫び声が聞こえてきた。


「!?」


あたしは何事だろうと教室の外を見に行く。


不審者でも現れたのかな。
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