教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
あれ?


陸と凛がいない。


ぼんやり見ている間に置いていかれてしまったらしい。


こんな時、たいていの場合はろくなことが起きない。


ため息をついた。


しばらく歩くと、陸が遠くに見えた。


とりあえず叫んでみよう。


「陸ー!」


「あっ、水香っ。置いていっちゃってごめん。さがしていたの」


そう言いながらパタパタとこちらに駆け寄ってくる。


「そういえば凛は?」


「えーっと、別の場所をさがしているはずなんだけど…」


そう言って彼女はキョロキョロする。


「…」


あたしは苦笑しながらポケットからケータイを取り出し、凛に電話をかけた。


どうせあちこちさがしているんだったら、電話する方が遥かに早いのに陸といい、凛といい、何やってんだ、この2人は。


「もしもし、凛?」


「…」


返事がない。


ふざけているんか?


「凛?」


「…」


「ねぇ、凛」


「…」


いい加減、イライラしてきた。


「凛ってば」


「…」


あー、もう!


ケータイって電話代、高いんだからね!


「ちょっと、ふざけないでよ」


「…か」


「え?」


「水香…」


「何?」


「あ、あ…」


何か様子がおかしい。


「凛、どうしたの?どこにいるの?」


「学校…」


確かに今いる場所から学校は近いけど、なぜ学校にいるの?


そう考えていた時、あたしの耳は悲鳴に引き裂かれそうになった。


「きゃーっ!!」


ブツン、ツー、ツー、ツー…。


電話は切れてしまった。


あたしの顔がすーっと青ざめていく。


凛、まさか…。


脳裡に嫌な考えが浮かぶ。


ディスプレイの<25秒 10円>という無情な表示が怪しさをいっそう引き立てる。


まるでホラー映画みたい…。


「陸、行くよ!」


「水香!?」


あたしは陸の手を引いて走り出した。


学校に向かうべく。
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