教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
今いる場所から学校までは5分くらいだ。


だが、こういう時の5分は長い。


そして信号に引っかかってしまう。


長い信号なのでいらだつ。


いらだつあまり蹴飛ばしたくなるほどだ。


「早くしてよー」


しゃべる信号なんてないけど、つい言ってしまった。


すると陸が横から聞いてきた。


「水香、凛に何かあったの?」


「なんだか様子がおかしくて。悲鳴をあげて電話を切ったから、ただ事じゃないことは確かだよ」


「そんな…!」


「それで学校にいるって言ってたの」


「そうだったんだ。凛、大丈夫かな」


「わからない。無事を祈ることしか出来ない…」


その言葉で陸は目を伏せてしまう。


あたしもまた、悔しかった。


今、凛の元に駆けつけようとしているけど、もし彼女が事件に巻き込まれていたら巻き込まれていたで、どうすればいいかわからない。


こんなことしか出来ないなんて。


自分は無力なんだと思った。


そしてそんな己の無力さを呪い、怒り、恨み、嫌がり、忌むのだった。


信号が青になったので横断歩道を渡り、夜の闇の中を2人で走り、ようやく学校に着いた。


部活の練習もすでに終わってしまったらしく、グラウンドに人影はない。


「凛!」
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