教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
あたしと陸は唖然としていた。


だって凛ったらあの大きな悲鳴のわりにピンピンしているんだもの。


「凛、大丈夫!?」


陸は凛に駆け寄る。


一方の凛は気まずそうな顔。


まさか…。


「凛!あなた芝居打ったわね」


あたしの言葉に凛はしおらしく頭を下げた。


「ごめん。こうすれば絶対水香達に合流出来ると思って」


「まったく」


陸は肩をすくめた。


「やれやれ」


あたしも言ってやる。


まったくこの人は人騒がせなんだから。


心配させないでよね。


でもほっとした。


「あっ」


いきなり陸が大きな声を出した。


「どうしたの?」


あたしが聞くと陸は膝をやや曲げて、足を変な風に動かす。


なんなんだ?


まさか新しいダンスでも編み出したのかな。


それとも古(いにしえ)より野村家に代々伝わる舞いかな。


バカなことを考えたけど陸の口から発せられた言葉は、新しいダンスとはまったく違うものだった。


「もう9時だよ。『悲しき復讐人、金沢郁真(いくま)』始まっちゃった!」


「え、ドラマ?」


凛は拍子抜けしたらしい。


ちなみにこれは主人公、金沢郁真が命を奪われた友達のために復讐に立ち上がるストーリーである。


だけど…。


「うそー、『悲しき復讐人、金沢郁真』、あれ大好きなのに!しかも今日が最終回じゃない!!」


あたしは焦った。
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