教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
こんな時、あたしが取る行動は1つ。


あたしは教室の鍵をきっちりと閉め、職員室の所定の場所に置いて走り出した。


「はぁ!?」


森田先生は予想通り、バカでかい声を出した。


「だから送っていって下さいよ。傘忘れたんです」


そう。


1つの行動というのは森田先生に頼むことだ。


「まぁ、そういう理由なら仕方ないか。お前、居残りだもんな。友達はみんな帰ったっていうところだろ」


頭をかきながら言う先生。


心なしか、少し顔が赤くなっているような気がする。


…っておい!


「どうして居残りって知っているんですか?」


「あ?だって及川先生が言ってたぞ」


及川準一先生は現代文の先生。


数学の先生と結構仲が良かったりする。


くっ、及川先生め。


「及川先生恨んだってダメだぞ」


あたしの考えがバレたらしく、先生が言った。


「はい。すいません」


「それに俺、今日は歩いて来たんだ」


「はいぃ!?」


車で数十分もかかるのに?


「嘘だよ。本当にお前からかうと面白いな」


先生はお腹を抱えて笑う。


「性格悪っ」


「ふっ、これが森田湊典ってもんだ」


だからって開き直られても。


「さて、行くか」


先生は立ち上がる。


「えっ?」


「誰が送っていけって言ったんだよ」


「…あたしです」
< 93 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop