コンプレックス*ラヴァー
「その子、何て名前?
2年生ならアキに聞けばわかるはず。」
アキちゃんって言うのは、1個下のカズヤの彼女。
こんなどうしようもない奴と3年もつき合っているという、しっかり者の可愛い女の子だ。
「えーと、確か…」
なんか変わった名前だった気がする。
食べ物…あ、果物?
「“彼女”の名前くらいちゃんと覚えとけよ」
隣でモトキが呆れてるけど…なんせ記憶が曖昧なわけだし、
あの後も何人も女の子の名前を聞いたんだから、覚えられなくたって仕方ない……
って、そもそも“つき合う”って決まったわけじゃ……
「……あ。確か、“くる…「あっ!いたぁっ」
俺の言葉を遮るように、教室に響いた女の子の声。
教室の後ろ側の入り口。
残っていたクラスメイトたちの視線が一斉にそっちに向かった。
「よかったぁ。いなかったらどうしようかと思った」
走ってきたのか、息を切らせながらも、
「一緒に帰ろ?先輩」
俺に向かって、その子はにっこり微笑んだ。