コンプレックス*ラヴァー
「……あ。」
くるみを駅まで送り届けた帰り道。
とある家の前。
偶然か。はたまたタイミングがよかったのか。
「自主トレ?」
玄関から出てきたばかりの慎也と遭遇。
制服でも部活のジャージでもなくて、ランニング用の格好。
今日も学校でスパルタ指導を受けてきたはずなのに……こいつはまだやるのか?
そのストイックさには、感服するよ。マジで。
「……ああ。」
面倒くさそうに、でも一応返事はしてくれた。
何か用か?と言いたげに、視線をもって促す慎也。
おっといけない。
忘れてた。
これを渡そうと思って、わざわざ遠回りしてきたんだった。
俺と慎也の家は近い。
とは言っても、隣だとか向かいだとかそんなマンガみたいな近距離ではなく、
徒歩15分と言ったところだろうか。
俺の家のほうが駅側にあるから、普通に生活する分にはこっちには用はない。
それでも、こうして定期的に訪れなくちゃいけないのは……
「ほい、コレ。今日の分。」
コレを渡すため、だ。