コンプレックス*ラヴァー



「……話って何?」



人気のない校舎裏。

目の前には、赤い顔で恥ずかしそうに俯く女の子。



「あのっ、私……」



その言葉の続きなんて聞かなくてもわかる。

誰がどう見たって“そういう”状況だ。

普通の男なら、ここで胸を踊らせるわけだけど……

俺の場合は違うんだ。



「……それ、アイツに渡せばいいの?」


「えっ?」



彼女が隠すように握りしめているのは、明らかに“ラブレター”。

教室を出るときから気づいてたんだよね。ホントは。



「慎也に、でしょ?いいよ。渡しておく。」


「えっ?」


「今日の夜…になっちゃうと思うけど、いいかな?」


「は…はいっ!よろしくお願いします!」



戸惑いながらも、女の子は俺にそれを差し出した。



「オッケー。……あ、でも、それ以上は期待しないでね?」


「……え?」


「あくまで、俺は“伝える”だけだから。返事は、アイツから直接もらって?」
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