コンプレックス*ラヴァー
「……はっ?」
慎也の一言で引き戻されてしまった。
「オメデトウ。」
祝う気ゼロの棒読みなセリフ。
いつものことだから、それはいいんだけど……
「なんで知ってんの?」
それが一番気になる。
……あ、母さんか?
あの人は…仕事でほとんど家にいないくせに、
この前、たまたま、よりによってくるみが来てるときに帰ってきて……
すっかりはしゃいで仲良くなってたんだよ。
くるみもくるみで……
「なんで、って……有名じゃん?」
慎也から返ってきたのは意外な返答。
「有名?」
何が?誰が?……俺が?
「ああ。学内で知らないやつ、いないだろ?」
そうなのっ?
ってか、慎也が知ってるって相当だよな?
クラスメイトの名前さえ覚えられない、こいつが!
「それに……」
慌てふためく俺を無視して、慎也は何かを言いかけた……けど、
「やっぱいいや」
すぐに口をつぐんだ。
……何?
「でもさ、“初彼女”で浮かれるのはわかるけど……あれはマズイだろ?」