コンプレックス*ラヴァー
「えーっ?いいよぉ。1人で帰れるから……」
慎也に応えた女の子。
それは、聞き慣れた声。
間違えるはずがない、声。
「そういうわけにはいかないだろ。俺が怒られる。」
「大丈夫。走ってくし」
「その短くてトロい足で?」
「ひっどーいっ。なんでいっつも、そういうことばっかり言うの?」
咄嗟に、近くにあった植え込みに隠れてしまった俺。
2人の様子は見えない。
いや…見たくない。
それでも、容易に想像できてしまう。
楽しそうに笑う、くるみの姿……を。
「ほら、送ってやるっつってんだから、早くしろよ。」
「いたっ。引っ張らないでよぉ…」
……何?これ。
なんで?こんな……
くるみはもちろんだけど、慎也も…何?
慎也が、女の子と話すこと自体珍しい。
なのに、こんな……
こんなに慎也、初めてだ。
“特別だ”って、聞かなくたってわかるよ……
「待ってよ、慎也くん!」