隣に住んでいるのは先生で……。
「綾子………」
私は前みたいにまた先生の声で目覚めるんだ。
また夢のようなものを見た。
でも、これって夢じゃなかったんだ………。
夢だと思っていたけど、本当は私の失っていた記憶だったんだ。
じゃあ………直くんって先生のことだったんだ。
「綾子?大丈夫か?」
目の前に先生がいる。
あの時はこんなにも幼かったのに………
立派な先生になって、成長したんだな………。
何だか、記憶が戻ると変な感じがするな………。
自分の記憶なのに、寝ている時に映画みたいに自分の過去の映像を見ていて、思い出すんだから………。
そう思っていたせいで目覚めても、何も言わない私を心配そうに見つめている先生。
先生にまた部屋まで運んで貰っちゃったなぁ………。
「また綾子を失うかと思った………」
そう言っていた先生の体は少し震えていて、こんなにも先生を心配させてしまったと思うと、申し訳ない気持ちになった。
こんなにも愛してくれているのがよく分かるのに、何で私は彼を信じなかったのかと後悔した。
そして、私の目からは涙が流れた。
「直くん………」
私のひと言に先生の頬に涙がすーっと一筋通った。
そのひと言で先生は私が記憶を思い出したことを察したようだった。
それから、先生は優しく私にキスをした。
そして、微笑みながら彼は言うんだ。
「おかえり」