親友ときどき上司~熱風注意報~
プロローグ~報告と発端~


「まだ、あの変なのと付き合っていたの?」

「いや、付き合ってはいなかったらしいよ。」

「何でわざわざロクデナシばかり…仕事以外は馬鹿なんじゃないの?」

 辛辣な親友の言葉に瑞希は苦笑する。

 昼食を上司であり親友の机で食べるのはいつもの事。


 大手アパレルブランドのデザイン部門に勤めて8年。
 室長になって2年。
 桜田瑞希は今年30歳になる。

 部長である親友から受け取った弁当に瑞希は、ありがとうと笑顔を浮かべた。


「瑞希は、自分の事を後回しにしすぎなのよ。アタシがお弁当作らなかったら食べる事すら後回しなんだから。」

「感謝してます。部長。」



 親友が瑞希の昼食を準備するようになったのは2年前から。
 室長になりたてだった頃、慣れない仕事と責任感から食べる時間も忘れ体を壊した。
 初めのうちは親友とは言え、直属の上司に毎日、しかも手作り弁当を作って貰うのは気がひけたが、今では社内の誰もが珍しがる事もなく日常と化していた。


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