親友ときどき上司~熱風注意報~


「もしかしなくても、マダ、なのネ。」

 荘司の胸から顔を上げた瑞希は、首だけで透子を振り返った。
 不思議そうに透子を見つめ、華奢な首を傾げる。

 にこやかに笑う透子のブラウンの瞳が、荘司に向かって細められた。

 何かを企む目に、荘司が身構えるように瑞希を抱く腕に力を込める。


「ミズキをアタシにちょうだい。」

「瑞希は物じゃない。」

「保護してるだけなんデショ。アタシが里親になるワ。」

 再び始まった姉弟喧嘩に、あまりにもそっくりな2人を前に瑞希はクスクスと笑い出した。

「何、笑ってんのよ?」

「ん、オモチャを取り合う姉弟喧嘩みたいだと思って。」

 瑞希を見下ろす琥珀色の瞳に睨まれ、肩を竦める。

「ミズキ、違うワ。取り合ってるんじゃないノ。決まってるのヨ。アタシが欲しいと思った時点で、荘司に選択権はないのヨ。」

 近付いて来た透子の言葉にも笑いが出る。

 何となく、この2人の相対関係が垣間見えたから。


 
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