親友ときどき上司~熱風注意報~


 嵐のようにやって来た透子は、帰りも嵐のように去って行った。

 大きなトランクケースを荘司に運ばせ颯爽と出て行く姿は、女王様のようだった。




「風邪ひくわよ?」

 透子をタクシーまで送って戻って来た荘司は、下着姿で立ち竦んだままの瑞希を呆れたように見て言った。

「えっ?あっ!」

 慌ててブラウスに手を伸ばした瑞希を荘司の手が止める。

「着るの?」

 大きな手で瑞希のブラウスを持つ手を掴んだ荘司が、片眉を上げて琥珀色の瞳を眇めた。

 ふっと笑われて優しく髪を梳かれると、

「そのままシャワー浴びて来なさい。夕飯まだでしょ?」

と、苦笑を零した荘司は瑞希から離れていく。

 何かを期待していた瑞希は、恥ずかしさに俯いた。


 同時に湧き上がる苛立ちに顔を上げると、膨れっ面で荘司から顔を背け着替えを掴むとリビングを出てバスルームに向かった。



 何よ!期待させて、結局子供扱いなんじゃないっ!



 子供扱いなら、何であんな事するのよっ!

 バカ荘司!









 
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