親友ときどき上司~熱風注意報~


 軽口を交わしながらも、明日の弁当にはケーキが追加されるはずだ。

 どこまでも甘やかす荘司に、瑞希は少しだけ泣いた。

「とりあえず、今日は夕食も付き合ってあげる。新作発表会前にぶっ倒れられても困るし。」

「ラッキー。フレンチでお願い。」

「調子に乗らない。いつもの居酒屋が1番落ち着くくせに。」

 笑いながら顔を上げた瑞希の表情は、いつもの表情だった。


 何で、荘司はゲイなのよ。

 いつもは考えもしない事を脳裏に浮かべた瑞希は、

 これは本格的に参っているなぁ。

と苦笑した。



 午後に備えて気合いを入れようと、大きく伸びをした瑞希は、続々とランチから戻った部下達を見渡す。
 その目が遠慮がちに、ブース内の自分達を見ている事に驚いた。

「みんな心配してるのよ。」

 呟いた荘司の言葉に、部下達を安心させようと笑顔を浮かべた。

 ちゃんと笑えている自信はなかったが、その気持ちが嬉しかったから。

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