親友ときどき上司~熱風注意報~
「お疲れ。」
車で通勤する荘司は、1度自宅に帰って瑞希と合流した。
カウンター席と4人掛けのテーブル席が3つのこじんまりした居酒屋のカウンターで、ビールのジョッキを軽くぶつける。
洒落た雰囲気も、流行りのBGMもないけど、料理はどれも美味しくて、瑞希と荘司は入社当時からよく訪れていた。
今も昔も、居酒屋と言う名の説教部屋だ。
「あんまり飲み過ぎるなよ。」
ここで会社の人間に出会った事はなかったが、会社から徒歩で来れる距離なので荘司の言葉遣いはプライベートとは違う。
時折、ポロッと出る事はあるが――
目立つ容姿の荘司は、極力面倒事は避けたいらしい。
荘司には荘司の苦悩を垣間見ている気分になる。
荘司に言っても、もう慣れたと飄々と笑われただけだった。
「今日はとことん飲む。」
「おい、人の話は聞け。飲み過ぎるな。」
「えー、やけ酒くらいさせてよ。」
「お前の場合、毎回やけ酒していたら肝臓使い物にならなくなるぞ。」