親友ときどき上司~熱風注意報~


「大丈夫。瑞希ちゃんの肝臓はアイアンレバーです。」

 ジョッキの中身を半分以上一気に空けて、瑞希はケラケラ笑う。

 笑っていないと怖かった。

 泣いてしまいそうで怖かった。


「もう酔ってんのか。瑞希ちゃんて歳…?」

 呆れ顔で笑った荘司の言葉に、眉間の皺を寄せて睨んだ瑞希だが、カウンター席に並んで座る荘司の片手がさり気なく瑞希の背中を撫でていて、文句の言葉を再びビールと一緒に飲み込んだ。


 美味しい料理に殆ど箸を付ける事なくグラスを空ける瑞希を、呆れながらも荘司は、何も言わず好きにさせてくれる。


 その優しさが暖かくて、また少しだけ泣いた。




――本当、何で荘司はゲイなんだ―――

 再び、普段なら考えもしない事を考えて、瑞希はジョッキを煽る。


 このバカな考えが頭を過ぎる現象は、何度かある。

 それは、荘司の言うロクデナシ男と上手くいかなくなった時だった。

―現実逃避―――

 ロクデナシ男への依存度で出現するのだから、困ったものだ。

 久し振りの現実逃避は、今回のダメージはデカい、と言っているようなもの―――




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