親友ときどき上司~熱風注意報~


 狭い路地に立つ瑞希のマンションの近くでタクシーを降りる。
 フラフラと千鳥足の瑞希は、荘司に腰を支えられながら辛うじて歩いていた。

 先に気付いたのは荘司。

「瑞希、ロクデナシがいるわ。」

 足を止めて、真っ直ぐにオートロックマンションの出入り口を見据えた荘司に、つられてそちらに視線を向ける。

「隼人?」

 日に焼けた肌に、栗色に染められた短めの髪。
 柴犬を連想する見覚えのある顔立ち。
 荘司よりは幾らか低い身長も、重労働で自然に鍛えられた体躯はバランス良くしなやかだった。

 瑞希の声に下を向いて立っていた隼人は、従順な子犬のような笑顔で瑞希の方へ顔を上げた。

 あぁ、この顔に流されていたのかもしれない。

「子犬の皮を被った狂犬?」

 ぼそりと呟く荘司の言葉が、あまりにも的を得ていて瑞希は小さく吹き出した。



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