親友ときどき上司~熱風注意報~
部長専用ブースは、フロア内の最奥の部屋。
部屋と言っても全面ガラス張りなので、フロアを見渡せる作りになっている。
昼休みの始まったばかりの今の時間は、社員食堂や社外にランチに出る者もいるので閑散としていた。
「で、その年下ロクデナシ男とは、ちゃんと、別れた?」
ちゃんと、の部分を強調し少し癖のあるブロンドの髪をかきあげた親友に、瑞希は弁当を開ける手を止めた。
親友とは対照的な腰まである漆黒の艶やかな髪を揺らし首を傾げた瑞希に、親友の眉間の皺が深くなった。
「そんな怒んないでよ。別れたんだと思うよ?ふざけるなって怒っていたから。」
端正な親友の顔が鬼の形相になったのを見て、瑞希は慌てる。
「ふざけてるのは相手の方でしょ。彼女を友達に斡旋する男がいる?」
「だから、彼女じゃなかったみたいだし。」
「瑞希、いい加減にしなさい。百歩譲って彼女じゃなかったとしても、ロクデナシでしょ?」
「うん…」
瑞希はチラリとガラスの向こうのフロアを見た。