親友ときどき上司~熱風注意報~
同じ様に弁当組がチラホラといるデザイン部門フロアは至って平和だ。
防音ガラスのブース内の会話が漏れる事はない。
分かってはいても、内容が内容なだけに気が気でない。
「まぁ、別れたんなら良いけど。」
親友の静かすぎる怒りに反論する事を諦めた瑞希は、ここは素直に頷いた方が良さそうだ、と華奢な首を縦に振った。
そのまま、弁当の蓋を開けると両手を合わせ、いただきますと笑顔で言った瑞希に、親友は大きな溜め息を吐いた。
「毎度毎度ロクデナシ男ばかり。今回はその中でも最悪。」
瑞希と同じ様に弁当を開けながら、彫りの深い端正な顔立ちの静かなる鬼はハスキーボイスで小言を続ける。
男運がないのは自覚している。
振られる度に、感情表現の苦手な瑞希を心配する親友には感謝していた。
それが、男を見る目のない瑞希への説教でも、親友の心配は痛いほどに伝わる。