親友ときどき上司~熱風注意報~


 鬼の形相の親友に“ロクデナシ男”と言われた男は、3ヶ月前に瑞希と知り合った。

 大手複合店内に瑞希の勤める会社の店舗がある。
 本社勤務の瑞希が店舗に足を運ぶ事は珍しいが、時折、販売環境や市場調査を兼ねて顔を出していた。

 その日は瑞希が室長を勤めるデザイン部門の新作スーツが店頭に並ぶ日だった。

 ターゲットを30代から40代の働く女性に絞り込んだ店舗なので、他店に比べると規模は小さい店構えだ。
 それでも、コンセプトが明確な分、他店では取り寄せになる商品も豊富に置いてある。
 この店の売上は順調のようだった。


 それは、本当に偶々だった。

 店長と雑談混じりに新作の話しをしている時。

 商品配達の運送会社の彼が来た。

 何となく、挨拶を交わし、何となく名刺を交わした。

 彼の運送会社は企業向けの配達を主としている会社。
 取引先での営業も業務の一環であり、瑞希も何人かの配達員と名刺の交換をしていた。
 それは瑞樹の中で、社会人の日常業務でしかなかった。


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