親友ときどき上司~熱風注意報~


 ああ、やっぱり。

 ふざけるなと怒鳴る彼を、黙って見送った。

 そこにあったのは、怒りや悲しみと言うよりは、虚しさだったような気がする。


 親友に怒られるだろうな、と苦笑いさえ浮かべていたのだから、瑞希にとっても彼を恋愛対象としていたかは自信がなくなった。


 彼の態度は最低で腹立たしいものだが、瑞希もまた彼を寂しさを埋める存在として見ていた気がして、特に責める気もなかった。
 いや、取り乱して責めて泣いて、そんな事は出来なかった。
 出来ないから、黙って諦めたのだ。


 だから駄目なんだ、と毎回怒る親友。

 取り乱す30女―――

 そっちの方が駄目な気がしてならないのだから仕方ない。

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