親友ときどき上司~熱風注意報~
ブツブツ文句を言いながら寝室を出た荘司は、キッチンに入りエプロンをつける。
大男がエプロン姿でキッチンにいる光景が、酷く滑稽な事は荘司も自覚している。
しかも、瑞希のリクエストのベイクドチーズケーキを作る姿は、さすがに他人には見られたくない。
「ゲイじゃなかったら惚れるって白状したようなもんね。」
泡立て器を片手に、自己中心的な考えを口にする荘司。
ここまで来たら、今の関係を壊すしかない。
苦痛じゃないからと言って、親友に毎日弁当を作る男などいない。
どんな理由が有れ、親友に濃厚な口付けをする男などいないのだ。
髪に触れ抱きしめ甘やかし、そうまでしても瑞希に荘司の気持ちが伝わる事はなかったのだから、強引に惚れて貰う事にする。
楽しそうに料理をする荘司は、好きになればなるほど相手に尽くしたくなり、何から何まで世話を焼きたくなるのだった。