ダイブ
星明かりが美しい夜だった。
どこかで梟が鳴いていた。
田舎と言い切れるほど田舎すぎず、背伸びしても都会とは口に出来ないような、そんな町に、私は住んでいた。
町随一の高い建物は、32階建て高級マンション。もちろんそんな所へ住める富裕層なんて片手で足りるから、入居者はスカスカ。
その屋上から。
私は、自分の意思と重力でもって、飛び降りた。
足が離れて世界が反転するまで、大して時間はかからなかったと思う。
ただ、地面までをひどく遠く感じた。
さすがに距離を確かめたいとは思わなかったので、目を閉じていたからかもしれないけれども。
そういえば、走馬灯っていつ見るんだろうなぁなんてことを、ぼんやりと思ったまま、
いつしか私の意識は夜に霧散していた。