処体験ガール(shotaiken girl)vol.5
「伊都!!」
「……!?」
声に我に返ると、車のウインドガラスがゆっくり開いた。
叫んだ母さんの後ろから、花美が、
ひょこ……
顔をのぞかせると、
「……ぃ、行ってきまぁす…」
微笑んだ。
「……っ」
それは、さ、
反則なくらい、カワイくて……
なんだか、久しぶりに見た気がする花美の笑顔に、ついうれしくなって、
オレも笑って答える。
「……ああ。7時にここで待ってる」
「……うん」
――ドクン……!!
心臓が……跳ねた。
きっと、気づいてない。
オレが今、どんなうれしいか……
花美、お前わかってねぇだろ。
約束したからな?
オレんとこに帰ってくるって、約束したんだからな?
動き出す車内から、バイバイ……と、手を振る花美。
単純にも、さっきまでの不安なんか消し飛んじまって、
ただ、この笑顔を守りたいと思った。
花美を傷つけるすべてのものから、他の誰でもなく、
――オレが守りたいんだ。