処体験ガール(shotaiken girl)vol.5
車を見送って歩き始めると、ロータリーにある大時計が鳴った。
ちょうど正午。
その音を背に、またしばらく歩く。
大通りから一本入ると、ウソみたいに静かになった。
さらに、脇の細い路地を抜けると、意外なほど広い空間に出る。
……といっても、自動車が3,4台停められるだろう程度のもん。
ひっそりと、建つ、二階建ての洋館。
「……へぇ」
中に入るとコーヒーのいい匂いがした。
看板は出ていない。
隠れ家みてぇな店。
「……相変わらず、いい店見つけてくんなぁ、成久」
「まあ、情報収集は俺が佐々に勝てる唯一の科目だからね」
チョコレート色のフレームのメガネ。
その奥の目が、品よく笑った。
「そんじゃ、まあ、聞かせてもらおうか」
オレが椅子に腰かけようとすると、反対に成久が立ち上がる。
「……?」
二階を指さすと、
「……今回の情報源。お前に直接会わせないと、話さないってさ」
そう言って階段を上がっていった。
二階のつきあたりのテーブル。
そこには、冷めたコーヒーと、
「……」
剣菱優華が、座りもしないで待っていた。