処体験ガール(shotaiken girl)vol.5
「霧里を返しなさいよ」
開口一番、不躾に言い放つ。
さすがというか、予想通り。
とことん上から目線の、可愛げのカケラもねぇオンナ。
無視して椅子に腰かけるオレを、
睨んでるんだろう、見なくても気配でわかった。
テーブルに肘をつき頬杖をつく。
脚を組みながら、視線だけを上げて成久を見た。
「……話すのは俺じゃなくて優華ちゃんだぜ?」
「このオンナの機嫌とれってのか?冗談じゃねぇよ」
睨み、唸ると、
成久は軽くため息をついて、無責任にも下の階へ戻って行く。
何考えてんだ、成久のヤツ。
ふたり、残されたところで、こいつと話すことなんかねぇっつの。
それどころか、同じ空間にもいたくねぇ。
「霧里はどこにいるの!」
「……」
「あの子を返しなさいって言ってるのよ!!」
「うるっせえなっ!!」
ガチャンッ!!
テーブルの足を蹴った。
その反動で中身をぶちまけながら、コーヒーカップが床に落ちて、無残に砕け散る。
立ち上がりざまに、
パキッ……
その破片を踏み潰す小さな音がフロアに響いた。
それほどの静寂。
「……」
「……」
オンナに怒鳴るのはコイツで二人目。
でも、その原因はどっちも、たった一人のオンナのためだ……
――花美……
「……今さらどのツラ下げて、剣菱がアイツを呼び戻すって?調子いいこと言ってんじゃねぇよ」
「佐々山が剣菱のやることに口挿もうっていうの?……ずいぶんとご立派じゃない」
「……」
まったく、花美がこいつと従妹なんて、到底思えねぇな。
剣菱優香を見据えたまま、
いつも、どこか自信のなさが見え隠れする、甘い花美の口調を思い出して、
愛しくて……
目の前のオンナに、怒りが込み上げてきた……