全部、私からだった。
咄嗟に、皆人くんが頭に浮かんだ。

嫌だな、本当に。



――と、

「好きなヤツいるんだ」

見透かしたように谷口くんは言った。


鋭い、何故バレたんだろう?



「いないってば」

頑張って否定してみたけれど、無駄だった。谷口くんはもう確信しているようだ。



「そっか、残念」

呟くように言って、一瞬だけニッと微笑んで見る。そうして、おもむろに立ち上がった。



「どこ行くの?」

見上げて尋ねれば、


「トイレ。……と、ついでにタバコ」

谷口くんはどこか寂しげな苦笑を浮かべてそう言うと、座敷を降りた。


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