全部、私からだった。
「じゃあ恋愛は、今度DVDで一緒に観てくれる?」


百歩譲ってそう言うと、


「はいはい。多恵はポップコーンでいいか? 俺、唐揚げも食いたい」


適当に返事をして、フードコーナーへまっしぐら。



ちゃんと私の話、聞いているのやら、いないのやら……。





映画館からの帰り。


地下鉄に揺られながらりっくんは、

「あいつがスパイだったとはなぁ。全く気付かなかった、クソッ」

などと一人で悔しがっていた。


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