全部、私からだった。
私が選んだ映画は、見事にハズレで、30分ぐらいで既に飽きてしまった。

でも自分が選んだ手前、「やっぱ、りっくんが借りたホラー先に見よ」とも言い出せず。



ただ静かに、時が流れるのをジッと待つ。



背後のりっくんが、時々私の髪をそっと撫でてくれたりするので、その度にドキドキする。


もしかしたら、映画に集中できないから、面白くないのかもしれない。だってこれ、去年の夏、大ヒットした映画だし。



「なぁ、多恵。気持ち悪くねぇの?」

不意にりっくんが口を開く。


りっくんも退屈してきた? 『ホラーにしよ?』って言ってくれないかなぁ。



「何が?」

振り向かずに問えば、

「いや、ほら、俺、汗でベッタベタ」

と答える。



うん、確かに。背中に湿った感触が。


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